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「あぁ〜愛が足りないってば!」 「はぁ?唐突に何を言ってるの?」 突然の発言に驚いて目を通していた手元の用紙から目だけ離し発言者を冷たくジロリと睨む楓(かえで) 「汰紀(たき)!」 発言者の名を諌めるように呼び、辺りを見回し発言者を再び睨み見る。 「心配しなくても、もうココにはお前とオレしか残っちゃいませんよ。」 当の本人は悪びれた風もなく机に頬杖えをついて楓を斜に構えて睨み返す。 「最近、生徒会の仕事ばっかで二人の時間が全然ないってばさ!」 思いっきり不満げに汰紀が漏らすと再び用紙に視線を戻し、用紙から目を放さないまま 「仕方ないじゃない。今、一番手が放せないことをちゃんとこの前説明したでしょ?違う、汰紀?」 冷静に楓が言う。 「へいへい、十分わかってますってば。だから、わざわざこうして残ってお前と二人きりの時間を無理矢理作ってるんじゃないか!」 「『わざわざ』?別に私は頼んではいないけど。」 イライラと不満を述べる汰紀に追い討ちをかけるように更に冷たく言い放つ楓。 「じゃ、今ココでオレを好きだと言ってみろ!」 「な、何!とーとつに!」 「今日のところはそれで我慢すると言っている!」 汰紀はなぜか偉そうに腕組みして仁王立ちする。 「いや!」 即決で却下する。 「ほらやっぱり」 「何が『ほら』なの!もう!邪魔するのだったら先に帰って!」 「はいはい、わかりましたよ!お邪魔様!」 「はぁ〜〜」 バタンと扉を勢いよく閉めてから扉を背に部屋を出て一つ大きく溜め息をつく汰紀。まただ…。最近こんな事の繰り返しばかりだ。 別に好き好んでこうなっている訳ではないのだが。売り言葉に買い言葉でついこうなってしまう。後に残るのは焦燥感ばかりだ。 落ち込んだ頭をやっとの思いでノロノロと持上げるとふと視界の廊下の先にボンヤリと光があった。一瞬驚く汰紀。 実は超常現象関係は一切苦手な汰紀であった。 遊園地のお化け屋敷でさえ大嫌いで、1回だけ面白がる楓に無理矢理連れていかれ終始楓に半泣き状態で抱きつきっぱなしであった。 でも、あれはあれで良かったと思い出しほくそ笑む汰紀。そんなことを思い出しながらも、改めて目を凝らしてよく見ると見慣れた後ろ姿が見えた。 「あれ?矢那崎先生?」 と声を掛けると 「おぉ、何だ岩間(汰紀の名字)か。」 いつもの咥え禁煙パイプでその人物は振り返った。手には沢山の書物を抱えていた。 「先生!どうしたんです?こんな夜遅くに〜」 「ちょっと野暮用でね、調べ物をしていた。」 「先生が!珍しい!」 「俺だって勉強するの!丁度よかった、そこの残りのも持ってくれるか?」 「はいはい、職員室までお手伝いしますよ。」 そういうと汰紀は矢那崎の指した残りの書物を全部手に取った。 「はぁ?何どうした?やけに素直じゃないか?お前の方こそ珍しいんじゃないか?」 「人の好意には素直に甘えるもんです。」 「ではでは、よろしくお願いします。」 そして、二人は並んで歩き出した。 「お前もこんな遅くまで大変だな〜部活か?」 「いんや、俺は加東(楓の名字)に付き合っていただけですから。」 「加東の?…あぁ、生徒会のあの件か。」 「何だ、先生の用事なんですか?」 「あぁ、でもそんなに急いでいるものではないんだけどね。」 「え!?」 矢那崎の言葉に驚く汰紀。 「急がないで構わないと言ってあるんだが…そう言えば…何でも、この仕事が早く終わると次の仕事までに少し時間が空くとか言ってたな加東。」 「……。」 矢那崎の言葉を聞いて立ち止まり黙り込む汰紀。 「ん?岩間?どうした?」 「先生!!」 「あ?」 「すいません!」 「え?」 と再びどっかと自分の抱えていた書物を矢那崎に渡すと汰紀は踵を返し走り去って行った。 「あれ?岩間!一体どうしたっていうんだ?廊下は走っちゃいかんぞ〜って…それにしても職員室まで俺持つのか?ははは…。」 取り残された矢那崎は大量に積みかねられた許容量を超えた書物を手に独り苦笑いを浮かべるのであった。 「楓!!」 「汰紀?あんた先帰ったのでは??」 突然、戻って来た汰紀に駆け寄られると抱きしめられ驚く楓。そして、すべてを奪い取るような激しいキスの嵐。 ひとかけらの抵抗も無くなるほどの。やがて互いの唇が離れると 「…どうしたの?」 楓が問うと 「もしかしてこの仕事の後、オレとの時間作ろうとしてくれてた?」 汰紀は楓の瞳を覗き込みながら尋ねた。 「二人の時間が欲しいと思っているのはあんただけじゃないっていうことを覚えておいてね。」 恥ずかしいのか汰紀から視線を外しながら楓はボソボソとぶっきらぼうに言う。しかし、ゆっくり顔をあげ 「好き」 「え?」 「汰紀が好きよ。」 楓は今度は真っ直ぐ汰紀を見つめて言った。 すると途端、汰紀は複雑な表情を浮かべ、慌てて楓から身体を引き離すと後ずさりしてそのまま教室の後ろの壁にぶつかると 両の手で顔を押さえヨロヨロとその場に座り込んだ。 楓は驚いて汰紀に駆け寄り、腰を落とし汰紀の顔を覗き込む。。 「汰紀!どうしたの?」 「いや、もうそれ以上言わなくていいです。」 「さっき、散々言えと言ったのは汰紀でしょっ?」 「・・・ダメそれ以上言ったらオレは…。」 依然、両手で顔を押さえ俯いたままの汰紀。 「?『オレは』何?」 楓は汰紀を覗き込みやさしく尋ねた。 「死んじゃう…。」 「は?死ぬ?何それ?」 「ほら!」 というと汰紀は楓の手を取り、自らの左胸に押し当てた。 「?!どうしたの!!すごくドキドキしてるけど?具合でも…」 「だから!楓の『好き』にオレは今だ免疫が出来てないの!」 とふて腐れた。 「へ?免疫?」 「はぁ〜自分でもここまでとはビックリだよ…まったく。」 と情けない声を上げ、火を噴きそうな真っ赤な顔で恨めしそうな目で楓を見上げる。 そんな汰紀を見て、つい可笑しくなって楓は笑い出すと、汰紀は 「うぅ〜笑うな!!」 と言って楓を引き寄せ再びその唇を塞いだ。今度は優しく触れるキス。そして、楓の胸元に顔を隠すようにうずめる。 その耳はまだ真っ赤であった。 「なんだかオレ…我儘な子供みたいだな。」 恥かしそうに汰紀がボソリと言うと 「そうね、誰にでもは困るけど…。」 楓が優しく囁く。 「けど?」 「私だけにはいいの」 「ほんとに?」 「ええ、私の誰に譲れない優越感だもの」 そう言って微笑んだ楓の手を取ると汰紀はその甲にそっと口付た。 「でも…。」 「でも、何?」 「もう『すき』って言うのよそうかな〜♪」 と悪戯っぽく楓が微笑む。 「え?」 「どう?」 「どうって言われても…それも嫌だな。」 と苦笑いで答える汰紀に 「嫌?だって心臓に悪いのでしょ?汰紀が死んじゃったら嫌だもの。」 「死なない!死なない!」 大きく首を横に振る汰紀に 「うっそ!」 楓が再び楽し気に微笑むと急に真顔になった汰紀が呟くようにいった。 「やっぱ…」 「え?何?」 「オレ、死ぬかもしんない・・・」 そう言ってうな垂れた汰紀の頭を呆れて楓はポンと叩いた。 |